PART 2


「光一ー!」

「いたか?」

十字路で純と翔は合流した。

翔の問いかけに純は首を横に振った。

「はあ…はあ…全然ダメだ……一体どこに行ったんだろう…?」

めぐみと大地も二人を見つけ、駆け寄って来た。

「どうだった?」

「こっちにもいなかったわ…」

「僕も全然見つからなかった…」

「ごめん…大地君まで付き合わせちゃって。学校もあるのに」

「いいよ……僕だって光一兄ちゃんが心配で授業なんか受けてられないよ」

走り続け、お互い疲労の色が濃くなっていた。

ピリリリリリ!!!

突然、めぐみの携帯が鳴った。

「はい…あ、正樹?…うん、わかったわ。それじゃ」

「どうしたの?」

「正樹が『家で待っててくれ』だって」

「家?」



「純兄ーっ!大変だー!」

家で待つこと数分。息を切らせながら正樹が全速力駆け込んで来た。

「どうしたんだ、正樹?」

「光一の奴……あいつ…クラスの奴にいじめられてたらしいぜ!」

「何だって!?」

思わず全員が立ち上がった。

息を切らせながら正樹が続ける。

「友達が見たって言ってたんだ。間違いねえよ」

「…それで光一は学校に行かなかったのね」

めぐみが腕を組んで頷いた。

「でも、それじゃ光一はどこに……?」

「何か思い当たる事ってないの?」

「思い当たるって言っても…」

全員は一斉に考え込んでしまったが、誰もその理由に思い当たる事はなかった。

「光一の部屋とかに何かねえかな?」

翔がポツリと呟いた。

「そうだね、ここで考えているよりは何か分かるかもしれない」

「あ、純兄。俺もう少しいじめの事調べてくるよ。何か気になるからさ」

「じゃあ、俺も行くぜ」

「わかった。翔、正樹、頼むよ」

こうして翔達と分かれ、純、めぐみ、大地の三人は光一の部屋へと向かった。



「へ〜、結構片付いているわね」

光一の部屋はしっかり整頓されており、綺麗なものであった。

「何か手がかりがあれば良いんだけど…」

三人は手分けして部屋の中を探した。

「あれ?」

大地が机の上に何かが置いてあるのに気付いた。

「純兄ちゃん、めぐみ姉ちゃん…これ、光一兄ちゃんの手紙じゃないかな…?」

二人は手を止めて大地の元へ集まった。

「何て書いてある?大地君」

「えっと…『母さんの所に行って来ます』だって」

手紙には光一の字でそれだけが書かれていた。

「『母さんの所』って…純達のお母さんって…確かもう…」

「うん。三年前に……」

「どう言う意味なのかな?」

何となく三人は予想がついたが決して口に出す事はしたくなかった。

「あ…もしかして」

純は何かに気付き、部屋のカレンダーに目を向けた。

「やっぱり、今日だったのか…」

今日の日付けに書かれていたメモを見て、純は溜息混じりに呟いた。

顔を上げると、純は二人の方に向いた。

「光一の場所がわかったよ」



「…言いたい事はわかりました。しかし…私はそのような報告は受けてないんですが…」

「そんなわけねえよ!本当に弟がいじめに遭ってるんだって!」

翔と正樹は小学校の校長室で担任を交えて話し合っていた。

校長も担任も、突然の来訪者の突然の告発に驚きを隠せない様子だった。

「奥山先生、どうなんですか?」

光一の担任である奥山先生。実は去年まで正樹の担任だった人だ。

「和泉、お前が弟を思う気持ちはわかるけどな、先生のクラスでそんな事は起こっていない
んだ」

「でも先生!」

「本当はサボリとかじゃないのか?」

「違うって!…何でだよ先生…あんたそんな事言う人じゃなかったじゃねえか!」

ずっと黙り込んで話を見ていた翔が急に立ちあがった。

「…行くぞ正樹」

「でも翔兄貴!」

「これ以上話したって時間の無駄だって。どーせ自分の評価が下がるから校長に黙ってたに決まってんだ」

「な、何を言ってるんだ、君は!」

思わず奥山先生の声が荒立つ。

「行くぞ」

出ていく翔を急いで正樹は追いかけ、出ていった。

「君、本当かね?」

「いえ、そんな事は全くありませんから…」

誤魔化しながら先生もそそくさと校長室を出ていった。



「全く、何だよあの態度!」

正樹が愚痴を漏らしながら思いきり石を蹴った。

下校時間になっているため、校門には多くの生徒がいた。

「けどどうする?肝心の先生があれだぜ。これじゃ何が起こってたか全然わからねえ」

「う〜ん…やっぱクラスメイトに聞き回るしかねえのかな?」

「正樹、お前光一のクラスメイトわかるか?」

「全っ然、知らねえ」

「ハア…」

二人はそろって大きく溜息をついた。

「あ〜あ…何か今日つまんなかったな」

「光一の奴、休んだもんな」

翔と正樹はすぐに聞こえて来たこの言葉に反応した。

物陰に隠れ、声の主を探すと、それは四人の少年だった。

「あ〜あ、やっぱ昨日やり過ぎたかな?」

「流石にばれたんじゃねえか?」

「大丈夫だろ、あいつもうチクる勇気もねえだろ」

「昨日、ちゃんと言っといたしな」

話しながら四人は次第に翔と正樹の目の前まで近付いてきた。

「まっ、俺らがこれ持ってればあいつは何もできねえよな」

四人組の一人がポケットに手を入れて何かを取り出した。

「あっ!あれ…」

それは正しく光一が肌身話さず持っていた金色のペンダントであった。

「けどさ〜、こんな物が宝物だなんて変わっているよな、あいつ」

「お母さんの写真だぜ〜」

「うわっ!マザコン!」

「アハハハハハハハ!!!!」

「あいつら〜…」

話を聞いていた正樹に言い様のない怒りが込み上げてきた。

無意識の内に拳が固まる。

「もう我慢できねえ、翔兄貴、行ってもいいか?…って…あれ?」

気付けば翔の姿が忽然と消えていた。

「でもさ、やっぱバレたらまずいんじゃねえ?結構色々やったしさ」

「大丈夫だって、もうすぐ卒業だしバレっこねえよ」

「誰にも言わなけりゃ大丈夫だよ」

「いや〜、聞かせてもらいたいな〜俺は。その事もうちょっと聞かせてくれねえか?」

いきなり四人は後ろから肩を抱かれた。

びっくりして四人が黙り込んだ。

いつの間にか、翔が四人の後ろに回り込んでいた。

「ちょっと話聞かせてくれねえかな?」

「……に…逃げろぉ!」

翔の手を振り払うと四人は一目散に校門から出ようとした。

するとその前に正樹が立ち塞がった。

「話は聞かせてもらったぜ。お前らか!」

「やべえ、あれ光一の兄貴だぞ!」

「畜生!どけ、この野郎!」

四人はランドセルを振りまわした。

正樹はその内二人の物を掴むと引っ張った。

「うわっ!」

そのまま二人が転がる。

しかし、ペンダントを持った子達は二人を置いてそのまま逃げようとしていた。

「待ちやがれ!」

翔があっという間に追いつき、捕まえると倒して地面に押さえ付けた。

「離せよぉ!」

往生際悪く少年達がじたばたと暴れる。

「さあ言え!お前達光一に何したんだ!」

腕を後ろで押さえながら正樹が怒鳴った。


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