PART 4

「兄さん…」

意外な来訪者に光一は驚きを隠せなかった。

気まずいのか、慌てて目を逸らす。

「やっぱりここにいたのか…良かった。無事で…」

ここまで走ってきたのだろうか、十二月の半ばにもかかわらず、純は相当の汗をかいていた。

「母さんの命日だったからね」

「うん……」

立ちあがり、光一は右手に握り締めた花束を墓前に添えた。

「……もう知ってるんでしょ?いじめの事」

「うん…」

兄の表情を見るのが怖いのか、光一は背を向けたまま言った。

「ごめんなさい…黙ってて」

「いいよ、心配かけたくなかったんだろ?」

表情は分からなかったが、光一は黙って頷いた。 「手紙…『母さんの所に行く』って書いてあったから心配したよ」

光一が純の方へ顔を向けた。

「正直に言うとね。本当に母さんの所に行こうと思ってた…母さんのいる所に……でも臆病だね、怖くなってやめちゃった」

「ごめんな…光一」

気付いてやる事の出来なかったやるせなさ、ここまで光一を追い詰めてしまったと言う無力感が込み上げていた。

「いいってば、もう…」

そんな言葉を遮る様に光一がまた背を向けた。

「でも…光一」

不意に、純が後ろから腕を回してきた。

「やっぱり、一言でも言ってもらいたかったな…」

「兄さん……」

「迷惑なんかじゃないよ。だってさ…僕も正樹もたった二人だけの家族なんだからさ。もっと頼っても良いんだよ」

「……ごめんなさい」

「家に帰ろう、光一」

「……うん」



「一貫教育制?」

正樹と大地が揃って首をかしげた。

「ああ、確かそんな学校があったような気がするんだよ」

「で?それって何なの?」

「話の学校だと…簡単に言えば小・中・高の全部が一つの学校になってるって所ね」

一度だけ見たかすかな記憶を思い返しながらめぐみが答えた。

「で…」

正樹が目の前の山積みにされた冊子を指差した。

「この中からその冊子を見付けろって?」

「………気が遠くなりそうね」

「しょーがねえだろ。まさか使うなんて思ってなかったからよ」

「だから意味も無く持っていくなって言ったのに…」

純とめぐみは共に溜息をついた。

「いるんだよね、『後で見る』って言って大量に持ってく人」

光一も呆れ気味に言った。

「ハア…とにかく探そう」

純が光一を連れ帰った夜、純達は兄弟3人で話し合った。

光一は学校に恐怖を抱き、説得にもかかわらず、かたくなに学校に行くのを拒んだ。

お互いに言う事も尽きてしまったその時、純がある学校の存在を思い出したのだった。

そこは「一貫教育制」と言う小中高の教育課程を一挙に行う特別な学校だった。

『同じ学校ならば何かあっても力になれる』

光一も納得し、3人は一緒にそこへ入学する事にしたのだった。

翔が学校案内の冊子を集めていた事も思い出したので翌日、めぐみも手伝って翔の家でその学校について調べる事になった。

しかし、翔の集めた冊子の数は並大抵のものではなかった。

部屋の中央に積まれたそれを6人は一つ一つ確認していった。

「ないな〜…」

大地がハズレの冊子を閉じた。

「あ!」

めぐみが声を上げた。

視線が一斉に集まる。

「翔………」

「何だ?」

「何で女子高のまであるのよ!」

パコーン!

丸まったパンフレットが気持ちの良い音を立てて翔の頭を直撃した。

「ん?何だこれ?」

正樹が山の中に表紙に黒いカバーのかけられた物を見付けた。

「兄貴、これどこの学校?」

「…さあ?覚えてねえな」

「ふーん………うわっ!!!」

突然、正樹が中身を凝視したまま動かなくなった。

「どうしたんだ、正樹?」

純の問いかけに我に帰り、正樹は慌てて本を閉じて後ろに隠した。

「何なのこれ?」

しかし、丁度後ろにいためぐみがそれを抜き取って開いた。

「あっ!」

翔が本の内容を思い出した様だったが既に遅かった。

「………この………バカーーーーーーーーッ!」

「ぐわっ!」

顔を真っ赤にしためぐみが翔に本を叩き付けた。

「何でこんな物混ぜとくのよ!信じらんない!」

あまりの勢いにびっくりした大地は落ちたそれを拾い、開いてみた。

正樹も不思議に思って覗き込む。

「わっ!」

同時に声を上げ、大地は鼻血を出した。 中身はそう…「アレ」である。

「わっ!ばかっ!やめろ!」

次々とめぐみは手元の冊子を拾って投げ付けた。

バシッ!!!

そして、その内の一冊が翔の顔面にクリーンヒットした。

体勢を崩し、そのまま翔が倒れる。

「痛ってー!」

「天罰よ!全く…」

そんなやり取りに呆れた純が翔の顔に乗った冊子を摘み上げた。

「あれ…これって…」

6人の視線がその冊子に注がれる。

やがてお互いに顔を見合わせ、そして……

「あったーっ!!!」

歓喜に満ちた声が上がった。



「ふう…」

ガラガラと音を立て、職員室の戸が閉められた。

純は溜息をつくとその場を後にした。


「よっ!」

校門を出た時、聞き覚えのある声が純を呼んだ。

そこには翔とめぐみの姿があった。

「志望校、変えてきたんだろ?」

翔の問いかけに純は黙って頷いた。

「あのさ…」

「?」

「実は俺たちも行こうと思ってるんだ…」

「え…?」

驚いた純に向かってめぐみが続ける。

「あたし達もそこの学校受けるわ」

「まあ…知らない奴ばっかの学校よりお前達と一緒に行った方が気が楽だからな」

「そういう事よ」

二人は明るく笑った。

「二人とも…」

「二人じゃないよ!」

翔の後ろから大地がひょっこり顔を出した。

「僕も編入するよ」

「って訳だ。十年以上の付き合いだしな」

「もう少し腐れ縁に付き合うわよ」

「ごめん…僕達の都合なのに…」

「何言ってんだよ!」

翔がうつむく純の背中を叩いた。

「俺たちはこれで言いと思ってんだぜ。お前が引け目感じちゃ話にならないだろ」

「そうだよ、僕達はやりたい事やってるだけだよ」

「それに、あんた等だけじゃ頼りないし、やっぱりあたしが一緒にいた方が心強いでしょ?」

三人の言葉に、不思議な懐かしさを覚えた。

お互い、困った時に一緒に助け合ったのは昔から何一つ変わらない関係だった。

「あ、そうだ。僕、もう行かなくちゃ」

「え?」

「ごめん、弟達と待ち合わせしてるんだ」

時計を見ると時間が迫っているらしく純は慌てて走り出した。

「三人とも、ありがとう!」

立ち止まり、三人に手を振って純はその場を後にした。



「兄さーん!」

光一が手を振る先に、走る純がいた。

「遅えぞ、純兄!」

胸を張って正樹が言う。

そんな二人に純は謝り、息を整えて顔を上げた。

「ちょっと遅くなったけど、三人とも来たよ、母さん」

あれから暫くして、純達兄弟は全員で母の墓前に来ていた。

光一が代表で花を添え、三人は揃って手を合わせた。

やがて、純が言葉を送った。

「…これからも兄弟三人、力を合わせて生きていくよ。だから見守ってて…」

「母さん…俺、兄としても弟としても、もっと、一生懸命頑張るよ…頼られるくらいに」

「母さん…僕、強くなるよ。イジメだけじゃなくって、どんな辛い事にも負けないくらいに強くなる」

そして光一は二人に聞こえない様に小声でもう一つ呟いた。

「それから…」

純達の方をチラッと見てすぐに視線を戻すと再び光一は言葉を送った。

「それから、これからはもうちょっと兄さん達に頼るけど…良いよね…母さん……」

帰ろうとした時、ふいに、風が三人を優しく撫でた。

何だか、それが三人の再出発を祝福する母の声のように暖かく感じた。


「Tith」作者+出演者によるドタバタな座談会



全員:……………

作者:……………

全員:遅ーいっ!

ドゴッ!


作者:ぐはっ!ごめんなさーい!

正樹:ったく、遅いにも程があるぜ

めぐみ:全くよ!

翔:ホント…これでHP成り立ってるのかよ?

作者:うう…情けない

大地:次からは本当に大丈夫だよね?

作者:大丈夫!『多分!』

翔&めぐみ:一言多い!

バキッ!


純:まあまあ。その辺にしようよ、みんな。

翔:まあ、今日の所は純に免じて許してやるか…

めぐみ:そろそろ今回の事について話しましょ

正樹:光一がいじめられて…家出するって話だったけど

光一:家出じゃないよ、母さんの墓参りに行ったんだよ

大地:命日だったんだよね?

光一:うん…悲しいよね、大切な日を忘れちゃうのって

純&正樹:うっ!(グサッ)

光一:母さん、忘れられて可哀想だし、せめて僕だけでも行ってあげようと思って…

純&正樹:ううっ…(グサリ)

純:正樹…光一の奴怒ってないか?

正樹:ありゃあ気にしてるな、相当…

光一:それに……

純&正樹:
ごめんなさーい、光一ーッ!

めぐみ:以外と根に持つタイプの様ね、光一って…

翔:温和な顔して…怖い奴だ…

大地:(慌てて繕って)でで、でもさっ!新しい学校見つけたんだよね!?

作者:(フォローに入って)そうそう!次からはそこの話がメインになってくるよ!

純:と言う事で…

作者:次は『受験』だ!

翔&正樹:うぎゃーっ!

大地:うわっ!何?何?

めぐみ:キツイ言葉に拒絶反応起こしたみたいね

翔:なあ…止めねえか?勉強の話なんて誰も興味ねえって

作者:いや…勉強でのた打ち回る翔や正樹を面白く見ることができるが…

正樹:鬼ー!

光一:仕方ないよ。重要な所なんだし

大地:飛ばして話を進める事、出来ないもんね

翔:あー。もうわかったよ!という事で次回は!

全員:『形の無い贈り物』です!よろしくーっ!


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