PART 1


冬休みも終わり、ついにラストスパートをかける三学期を迎えた。

授業のほとんどが受験対策一色になり、一部の生徒たちの間にもぴりぴりとした空気と緊張感が漂い始めていた。

そして、純たち6人も例外ではなく、毎日勉強の日々を送っていた。

今日も学校が終わり、6人は和泉家に集まっていた。

「なあ純、これ…どうやって解くんだ?」

いつも通り、翔が分からない問題を隣の純に聞く。

「えっと…このページの公式に当てはめるんだよ。AがここでBがここ」

「ああ、なるほど。サンキュ」

「純兄ー!」

次は正樹が呼んだ。

「歌の『がっしょう』の『しょう』ってどう書いたっけ?」

純はペンを受け取ると、練習プリントの端のほうに『唱』と書き込んだ。

「こっちか、『晶』かと思った」

「こっちは結晶の『晶』だね。合唱は声を出すだろ?だから口へんが付くって憶えればいいよ」

「あ、ほんとだ。サンキュー、純兄」

「純兄さん!」

続いては光一。

「この電池のつなぎ方って何て言ったっけ?」

「…直列つなぎだね」

「ありがとう」

「純兄ちゃーん!」

「ハア…」

全く、キリが無い。

次から次への質問で純はあっちへ行ったりこっちへ行ったり。

自分の勉強ができなかった。

「大変ね、純」

そこへ、めぐみが6人分の紅茶を運んできた。

「はい、少しは休もう」

混ぜられた砂糖の甘い香りが五人の手を止めた。

「「おいしー!」」

大地と光一が声をそろえて喜んだ。

お世辞抜きでめぐみの入れたお茶は美味かった。

絶妙な砂糖とレモンの割合が疲れた体に活力を呼び戻してくれる。

「しっかし、大変ね、純も」

めぐみがまた言った。

「わりぃな、俺らの頭良くねえから」

「良いよ、僕だって教えていると理解しているか復習できるしさ」

苦笑して言う翔に笑顔で純は答えた。

「でも、純ばっかり頼るのはやめたほうが良いわね」

「そうだね、純兄ちゃんも大変だし」

「得意な分野をそれぞれ教えたら良いんじゃない」

「そうだな」

翔が残りの紅茶をグイッと飲み干した。

「俺、地理と歴史の年号ならオッケーだぜ」

正樹が言うと続いて大地も名乗り出る。

「僕は理科」

「あ、僕は算数と国語」

「翔は?」

「体育」

「試験に出るか!」

バキィ!

「ってーっ!」

思わずめぐみは手元にあった辞書で突っ込んでしまった。

「あっ…やば、反射的に殴っちゃった」

「ててて…『反射的』って…辞書はねえだろ辞書は!…おかしくなったらどうすんだよ?」

笑ってめぐみが答える。

「だいじょーぶよ、それ以上変にならないでしょ?」

「あのなあ…」

「二人とも、そろそろ始めよう」

クスクス笑いながら純が言った。

大人しく二人は従い、勉強に戻った。

そして……

「え〜、純もわからないの?」

「うん、ごめん…これはちょっと…」

困る二人の元に翔がやって来た。

「ん?これ、こうだろ?」

翔はスラスラと答えを書いてしまった。

「「……合ってる」」

純とめぐみはそろって目を丸くした。

「何だか今、調子良いんだよ」

上機嫌で翔は自分の勉強に戻った。

「打ち所良かったみたいだね」

「まっ、結果オーライ?」

二人は密かに笑い合った。



「…よし」

リュックを背負い、純は気合を入れた。

月日はあっという間に過ぎ去り、この日、ついに入試の当日を迎えた。

「母さん、行って来るよ」

写真の母に告げると、純はペンダントを閉じた。

一階に下りると、すでに玄関に正樹と光一が待っていた。

「それじゃ行こうか」

外では、翔と大地とめぐみが3人を迎えた。

その日は、雲一つない快晴だった。


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