※主にここでは2兄弟の方を「兄」「弟」3兄弟の方を「長男」「二男」「三男」という風に書きます(例外あり)

プロローグ

ここは、とある街のとある公園、四月も近づき桜が芽を開き、その鮮やかな桃色を見せ始めていた。

その公園にいるのは6人の子供。

兄弟と思われる3人組と2人組。

あと1人はショートカットの女の子、その子は誰とも遊ばず、独りブランコで遊んでいた。

2人組の兄弟は先程から一緒に飛びまわり、仲良く様々な遊具で遊んでいる。

3兄弟の方はこちらも仲良く砂場の砂で山を作ったりして遊んでいた。

「ボク、ちょっとトイレ行ってくる」

3兄弟の一番上の子が立ち上がって言った。

「あ、オレも行く」

続いて二男も言い出したので二人は一番下の弟を残してトイレへ向かった。

三男は兄達を見送るとまた砂の山作りに戻った。

トイレを済ませ、二人がトイレを出た時だった。砂場の方から泣き声が聞こえたのは。

それは聞き覚えのある声、紛れもなく一番下の弟の泣き声であった。

二人は驚き、すぐに元の場所へと戻った。

するとそこには涙と鼻水で顔がくしゃくしゃになっていた弟と、ボコボコに壊されていた砂の山があった。

二人の兄は弟の元へ駆け寄ると泣き続けている弟から事情を聞いた。

話によると、二人がトイレへ行った後、周りで遊んでいた兄弟がやってきたらしい。

そこで砂場の所有権を巡って言い争いになり、怒った兄弟の兄の方が砂の山を蹴り壊したのだった。

三人が辺りを見回すと、その二人は今、ジャングルジムに登り始めていた。

二男が怒鳴って二人を呼び止めた。

兄弟はジャングルジムから降りると不思議そうにこちらを向いた。

二人の兄は泣いている弟を連れて来ると謝る様に言った。

兄弟の弟の方は三男よりも歳が下のようで、兄の方は長男と歳が同じぐらいであった。

弟はうろたえ、兄の方を向いた。

兄は悪びれた様子もなく、謝る気配はなかった。

その態度にキレた二男は歳の差も体格差も関係なしに兄の方に飛びかかった。

突然の攻撃に兄は突き飛ばされ、土の上に倒れた。

すると、兄の方も怒り、二男に飛びかかった。

二男は歳の差には勝てず、簡単に馬乗りに乗られ、殴られてしまった。

弟がやられて流石に今まで温厚だった長男も怒った。

二男を殴り続けている兄に掴みかかり、今度は長男同士のケンカとなったのだった。

髪を引っ張り、爪で引っ掻き、顔を叩いたり、噛みついたり。

いつの間にか独りで遊んでいた女の子もジャングルジムの上に座りそれを見ていた。

やがて、ケンカが激しさを増し、終りそうにないと感じた女の子はいきなり二人に向かって飛び降りた。

グシャ!

女の子の両足は見事にもみ合っている二人の背中をとらえた。

思わぬ不意打ちを受け、二人は痛みでケンカを止めた。

「痛たたたたた…」

「ってーな!何すんだよ!」

すると女の子は怒鳴ってきた兄に負けないくらいの剣幕で返した。

「何よ!あんたらがいつまでもやめないから止めてあげたんじゃない」

「…べ…別に止めてくれって言ってねえだろ」

「あんた達の弟が泣いてるから止めたのよ!」

「え?」

女の子の言葉で二人は冷静になり、弟達を見た。

言葉通り、弟達は三人とも大泣きしていた。

恐らくケンカの最中に何度も「やめて」と叫んだのだろう。

「で、何でケンカしてたのよ?」

「だって…」

二人は事の成り行きを話した。

「な〜んだ、そんな事なの?」

「オレ達はただ砂場で遊びたかっただけなのに…こいつの弟が」

「だからって何で砂山を壊すのさ?」

「だって…ムカついたんだもん…」

反省の色のない兄に長男がまた怒ろうとした。

「よし!じゃあこうしない?」

それを女の子が遮って言った。

「みんなでもう一回作ろう!どうせなら誰も作れないくらいおーーっきいお城にしようよ」

「え、お城?」

「はぁ?オレもかよ?」

「そうよ」

「何でオレが…」

「文句ある?」

ぶつぶつと言う兄に向かって女の子はギロリとにらんだ。

「…ない」

弟達も最初は戸惑ったが、しぶしぶこの案を受け入れた。

こうして、半ば…いや、かなり強引に全員一緒に大きな砂山を作る事になった。

「おい、もうちょっとそろえろよ」

「こっちの方がかっこいいんだよ!」

「もー、ケンカやめようよー」

こうして、ケンカをしそうになっては女の子が止めるという険悪な雰囲気のまま砂の城作りは進んだ。

しかし、進むに連れ、六人には少しずつ連帯感が生まれ、完成に近づく頃には笑顔で喋り合うまでになっていた。そして…

「できたーっ!」

「やったー!!!」

歓喜の声が公園に響く。

6人の前に、完成した大きな砂の城が祝福するかの様に静かに、優しく佇んでいた

そして、その頃にはもう二つの兄弟のわだかまりも全て消えて無くなっていた。

やがて、照れくさそうに兄が手を長男に差し出した。

「あのさ…さっきはゴメン」

「ううん、こっちもゴメン」

長男は全てを水に流す様に彼の手を握った。

「うんうん。良かった良かった!」

その傍らで女の子は嬉しそうに笑みを浮かべていた。

「ねえ、あんた達四月からあそこの小学校行くの?」

女の子が遠くに見える小学校を指差した。

「うん、そうだよ」

「あ、オレもそこだぜ」

「あたしも!凄い偶然!」

意外にも3人は揃って同じ学校に上がる予定であった。

「もしかしたら同じクラスかもね」

「じゃ、とりあえずじこしょーかいしとくね。あたしは木々原 めぐみ」

「ボクは純。和泉 純だよ」

「おれは弟の正樹」

「ぼく、光一」

「オレは大鷹 翔。んで、こっちが弟の大地。3歳」

「ぼく大地!」

「よろしく」

これが、六人の初めての出会いだった……


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